引っ越し手伝い(後編)

引っ越し手伝い(前編) の続きだ。

ちょうど11時ごろだろうか、兄弟は車に乗り込み新居へ出発した。

道は混んでいないし、ナビを見ても、ただただ気持ちいいいほどまっすぐ向かえばいいだけなので道に迷う心配もない。

車の中でも会話は続く、部屋探し中の不動産の話とか、家具はどこで買ったとかたわいのない会話だ。話をするだけでもソワソワ感が和らいでいく。

その時である、不意に私の頭で何かが起こり始めた。

頭がすっきりというか、急に力に満ち溢れてきた。これが精神安定剤の力なのかと思ったが、
ただ単に久しぶり体も動かし、外出、会話を楽しんでいるか判断はつかない。かといって、ピンピンなわけではない。倦怠感は相変わらずあるが、ここ数日どん底だったものを比べると、全然楽だった。

「やばい、なんか今冴えてきたぞ」と思わず弟に言ったくらいだ。

今になって当時を振り返ってみるが、薬の影響も否めないと思うが、全てでもないと思う。その後1週間ほど睡眠薬と精神安定剤を飲んだが、途中でやめている。なぜなら、「軽い」と感じたのと、0時前にはしっかり寝る、飲酒しないという、生活習慣改善で一番ピークでしんどかった状況は打破できたからだ。

ただ、薬を飲んで楽になるのであれば、絶対素直に飲んで楽になった方が良い。
薬だから癖になりそうとか、依存しそうで怖いとか言っている場合ではない。飲ま内で苦しむよりも飲んで通常の日常生活を送った方がいい。

さて、12時すぎに新居についた。
荷物を運び出す前に、新郎新婦と腹ごしらえに出かける。

朝晩は食が細いが、昼はさすがにお腹が空くさらに今日は体を動かしているので尚更だ。
平日も同じく、お昼は会社の皆と食事をとるので、実は食事も食べられないほど弱っている姿を見せまいと、ごく普通を食べていたつもりだ。
ただ、私の落ち着かない様子と、時々お茶を飲む手が震える自分を
不思議そうに見ていたメンバがいたのを記憶している。

蕎麦と新婦から「食べ切れない」ともらったミニカツ丼を平らげた。

腹ごしらえも終わり、荷物の搬入再会。
新居の目の前がコインパーキングなのだが、なかなかいい距離がある。駐車場からエントランス、エントランスから上層階へ搬入のバケツリレー方式で兄弟は作業を進めた。メンタルがボロボロでも、どうやら私は状況を見極め効率化のアイディアは勝手に浮かぶらしい。天からの授かりものだ。

一気に7割がた運び終えたとこで一息入れた。
嫁さんがアイスを買ってくれていて渡してくれた。
うまい

休憩の時に気付いたのだが、ベランダの角が私のお気に入りになった。
風が心地よい

前日心療内科のカウンセラーに言われて、今まで気にもしていなかったのだが、「散歩とかする時に5感に意識をしてみるといいですよ」を思い出した。色とか、匂い、音とかだ。

私は今ベランダで風を今感じている。

目は閉じているも、触感、ほのかな街の匂い、音を感じてみた。気持ちがいい。ずっとこうしていたいくらいだ。それほど心地よかった。

引っ越し作業中、ことある度に、ベランダ角で私は風を感じていた

後に、嫁さんは「おにーさん、あそこすごく気に入ってましたね」と言ってたらしい。

そんと時、ふとバルコニーから駐車場を見ていて不思議な感覚になった

「時間がゆっくりだ」

あれだけバタバタ朝から動き回っていたのに、まだ3時にもなっていない。

「いつもと時間の感覚が違う…」

いかに自分があくせく日々を過ごしていたかに気づいた。この2年間、午後の3時なんて、あっという間に秒速で過ぎ去るものだった。目が覚めて、仕事でバタバタして、気づけば夜、そんな生活をしていたので、これは大きな気づきだった。

夕方、車の返却する道中、「嫁さんとうちの弟の初のドライブが商用車のバンだな」など一同笑いながら西新宿に向かった。

実は自分の調子が最高に悪いことを、こっそり弟から知らされていた嫁さんは、シャイな性格にも関わらず、タイミングを見計っていたかの様子で、

「あまり無理しないでくださいね」と言ってくれた。

嬉しかった