おなかが空いたので、仕事の手を止めて食べものを探しにキッチンへ。食事をとってまだ1時間も経っていないのに......。これ、もしかしてあなたのこと? 常におなかが空いているように感じるなら、それにはいくつかの原因があるのだけれど、ほとんどの原因は食べものに関連していないと話すのは、著書『Hanger Management』を持つマインドフルイーティングの専門家、スーザン・アルバース博士。「私たちは1日のうちに、かなり多くの”食べる”決断をしていますが、そのほとんどは、真の空腹によるものではありません」と、アルバース博士。「24時間年中無休でいろんな食べものに囲まれ、心はストレスや感情でいっぱいです。食事の大半は、感情によって食べていると言えるでしょう」

ではさっそく、あなたがすぐになにかを食べたくなる原因をみていこう。

満腹感を得られない食事をしている

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一つ目の理由は、明らかな事実から認めよう。もし、1食分の食事がきゅうりだけとか、今流行りの極端なダイエットをしていて、ほとんどの食品群を食事から排除しているとしたら、おなかが空くのは当然のこと。その後は確実にお菓子を食べることになる。これでは、摂取カロリーを抑える食事制限の目的すら達成できない。ニューヨーク市にある学術医療センター、ニューヨークランゴーンヘルスに勤務にする臨床インストラクターのアレクサンドラ・ゾーヴァ医学博士の話によると、満腹感を持続させるには、タンパク質とヘルシーな脂質 (ナッツやアボカド、オリーブオイルなど)、食物繊維など、さまざまな栄養素を食事に取り入れることが必須である。「グリーン野菜など食物繊維が豊富な食材や、スティールカットオーツなどの複合炭水化物を食べると、胃や消化管の中で膨らむ性質を持つため、血糖値が減少し、満腹感が持続します」

ストレスが溜まっている

ストレスを感じ始めると、体は叫ぶようにして、私たちに今すぐなにか食べるように指令を送る。「ストレスが溜まると、体はコルチゾールとグレリンと呼ばれるホルモンを分泌するのですが、どちらのホルモンも、食欲を増進させるホルモンです」と、ゾーヴァ医学博士。ストレスによるやけ食いをする人の多くは、炭水化物を一番に求める傾向にある。クッキーやポテトチップスを手にとる前に、自然の中を歩いたり、リラックス効果の高い運動をするなど、自分に合った心を落ち着かせるテクニックを見つけて実践してみて。

クタクタに疲れている

朝方まで起きて仕事をしたり、テレビを見続けたりしていると、空腹ホルモンのグレリンが増加し、満腹ホルモンのレプチンが減少するので、「おなかが空いた」「おなかがいっぱい」の体からの信号を感じ取る機能が完全になくなる。つまり、体が疲労を感じ始めると、ホルモン分泌が正常に行われなくなり、常におなかが空いている状態を作り出してしまう。「十分に睡眠がとれていなければ、体はそれを危険な状態だと解釈するので、ストレスホルモンが増加するのです」と、ゾーヴァ医学博士。もし、十分に寝ていても疲れが一向にとれないようであれば、念のために、病院で睡眠時無呼吸症候群の診断を受けてみることを、ゾーヴァ医学博士は勧めている。

食べものの動画や画像を見すぎている

close up of young asian woman using meal delivery service and ordering food online with mobile app on smartphone while sitting on the sofa in the living room at a cozy home
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インスタグラムで美味しそうな食べものの写真や動画を1日中スクロールしているとしたら、おなかが空いていなくても実際に食べたくなる。ある研究は、単に食べものの写真を眺めるだけで、脳はおなかが空いたと錯覚を起こすことを証明している。「食べものの味や匂い、食感など、細かな想像を膨らませるほど、実際に食べたくなるものです」と、アルバース博士。だけど、こうした現象を食い止めることもできるとゾーヴァ医学博士は指摘する。「自分を甘やかすような食べものの写真を見る代わりに、ヘルシーな料理をハッシュタグで検索するのです。そしてそこで得たインスピレーションをもとに、おなかを満たす料理を作ってみてください」。おすすめのハッシュタグはコレ!#farmtotable(農場から食卓へ)#mediterraneandiet(地中海ダイエット)

「ながら食べ」をしている

アルバース博士によると、外出先でごはんを買って移動しながら食べるかわりに、時間を見つけてテーブルに座って食事をとるようにすれば、その後の間食を防げる。ある研究では、女性が同じシリアルバーを歩きながら食べたときと、座って食べたときの違いを比較したところ、歩きながら食べたあとの間食では、座って食べたときより5倍以上も多くカロリーを消費したよう。「ほかのことに気がとられていると、食べているものに集中できません」と、アルバース博士。「しっかりと両足を床に着け、腰と背中が椅子の背もたれについたのを確認したら、食べる前に深呼吸をしてください」

単に退屈なだけ

友達はみんな忙しくしていて、自分は家でなにもすることがない。一人で運動したり仕事をしたり、生産性のあることに取り掛かる気分には到底なれないときだってある。そんなときのマインドは、冷蔵庫へ一直線に向かいやすい。実際に研究者たちは、退屈さと悪い食習慣の関連性を実証しており、アルバース博士は、なにかを食べたくなる欲求と、退屈で時間を持て余しているときの違いを指摘した。「退屈しているとき、実際におなかが空いているわけではありません。台所をウロウロしながら、本当に食べたいものを探すのに苦労しているだけなのです」。アルバース博士は、退屈から脱却する5つのリストを作るように提案している。パズルを組み立てるとか、ガーデニングをするとか、そしてそのリストを冷蔵庫かパントリーに貼っておけば、退屈な時間から有意義な時間を過ごせるかもしれない。

インスリン抵抗性の可能性がある

上記の理由のどれにも当てはまらず、常におなかが空いている自覚があるなら、一度病院でインスリン抵抗性でないかどうかの検査を受けてみるといい。ゾーヴァ医学博士いわく、インスリン抵抗性を治療しないまま放置していると、いずれは2型糖尿病を発症する可能性がある。「インスリン抵抗性があると、細胞が効率的にインスリンに反応していないので、膵臓は細胞にグルコースを吸収させるために、通常よりも多くのインスリンを分泌する必要があります。そして余分に分泌されたインスリンは、体になにかを食べるようにと伝達するのです」と、ゾーヴァ医学博士。 食生活を見直し、適度な運動を日課にすることで、この悪循環を食い止めることができる。

食べる順番を間違えている

cropped shot of a woman's hand serving healthy salad on plate while having lunch in a restaurant
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ニューヨークにある研究所「Weill Cornell Medicine」が実施した興味深い小規模な研究によると、最初の一口目にロールパンをかじるのを、前菜を食べ終わったあとに変えるだけで、満腹感をより長く持続できることが明らかになった。この研究では、糖尿病患者が単純炭水化物を摂取する前にタンパク質と野菜を食べたところ、順番を逆にして食べたときよりも、食後のインスリンとブドウ糖の濃度が著しく低下したそう。「血糖値を上げにくい食品(低GI食)を先に食べると、インスリンの数値が上昇するのを防ぐことができ、おなかを減りにくくすることができるのです」と、ゾーヴァ医学博士。

※この記事は、「Prevention」から翻訳されました。

Text: MARISA COHEN Translation: Yukie Kawabata